知財保護の重要性
知的財産権とは、アイディア、デザイン、ノウハウ、企業や商品のブランドなど無形の財産に関する権利の総称です。具体的に以下の通り、分類されます。
種類 | 保護対象 | 具体例 | 審査の有無 | 最大保護期間 | ||
知的財産権 | 産業財産権 | 特許
(発明) |
独創的な新しいアイディア | 自動車のエンジン、POSシステム、スマホのバッテリー等 | 有 | 出願から20年 |
実用新案
(考案) |
新しいアイディア
(物の形状・構造・組合せ) |
スマホの形状(握りやすい)、刃に穴の開いたナイフ(切ったものがくっつき難い)等 | 無 | 出願から10年 | ||
意匠 | 物の形状や模様等の デザイン |
スマホの形状(デザイン)、文房具の形状、模様、 服のデザイン等 |
有 | 登録から20年 | ||
商標 | 商品やサービスのブランドネーム等 | 商品やサービスの名前、 ロゴ、エンブレム、会社名等 |
有 | 登録から10年(何度でも更新可能) | ||
その他 | 著作権 | 文学、学術、美術的な 創作物 |
映画、音楽、小説、 コンピュータプログラム等 |
無 | 著作者/公表後50年
※映画は公表後70年 |
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商号 | 会社の名前 | XX株式会社 | 有 | 期限なし | ||
商品等表示 | 誰の商品やサービスかを識別させる表示(商号、商品名等広く含む) | 周知/著名な商品名、ロゴ、商品の包装等 | 無 | 期限なし | ||
営業秘密 | 秘密情報 | 秘密に管理されている技術的な情報、営業的情報(顧客名簿)等 | 無 | 期限なし
(秘密である限り永続) |
- この他にもマスクワーク(IC等の半導体の回路配置)に関する権利等、様々な知的財産権が存在します。
知的財産権のトラブル事例 ~知的財産権の保護はなぜ必要か~
ケース1
背景 |
アメリカ人Aさんが「ABC株式会社」という会社を東京で設立し、家具の輸入販売を開始しました。
Aさんが海外で買い付けてきた家具はデザイン性が高く徐々に売り上げも増えてきたところ、大阪の「株式会社ABC」から自身が保有する登録商標「ABC」の商標権を侵害している旨の警告状が届く事態が発生しました。 商号は問題なく登記されているのになぜでしょうか?
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ポイント |
l 商号と商標とは異なる知的財産です。希望する商号で法人登記ができたとしても、他人の商標権を侵害していないことにはならないため、注意が必要です。
l 自社の商号を単に販売元や製造元を示すために表記する分には商標権侵害のリスクは低いですが、Aさんが「ABC」だけを抜き出して表示したり、これを強調するような表示をしている場合には権利侵害に当たる可能性が高いです。 l 特に会社名とブランドネームを連動させる場合、商号の選定時には「他人がすでに同じような商標を登録していないか」を調査することが重要です。誰も登録していないのであれば自身での商標登録も積極的に検討すべきです。 l なお、商標権を取得する際には、権利を取りたい商標と商品・サービスを特定する必要があります。そのため、例えば「株式会社ABC」が家具ではなく文房具について権利を取っていた場合には、商標権を侵害していないことになります。同じような商標が登録されていても、その権利の内容が衝突していないか確認し、衝突していないのであればやはり積極的に商標登録を行うべきです。 l また「ABC」が株式会社ABCの著名なブランドネームであった場合、商標登録されていなくても不正競争防止法に違反する(著名な商品等表示へのフリーライド)可能性も出てくるため、法人名や商品・サービス名の選定には慎重を期すべきです。
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ケース2
背景 |
中国人Bさんが日本で塗料販売会社を設立しました。乾燥時間を短縮できる新しい技術を使った塗料であり、製造は中国の工場で行う予定です。中国では既に特許を取得しています。日本での販売開始から1年経過後、日本のメーカーが同じような効果を謳った塗料を発売しました。市場で入手し分析したところ、同じ成分が使われていました。Bさんは日本のメーカーに対して販売の中止を要請できるでしょうか?
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ポイント |
l 特許、実用新案、意匠、商標は国ごとに発生する権利です。中国で特許権を取得していても、これを日本で行使することはできないため注意が必要です。
l 中国で特許を取得した際にその内容は公開されてしまっているため、まったく同じ技術について日本で特許を取ることは難しいです。日本で権利を取りたい場合は、改良技術について出願することとなります。 l 例えば最初に中国で出願を行った場合、その日から1年以内であれば優先権という制度が使えます。この制度を利用すれば、中国以外、例えば日本で同じ技術について出願をした場合、新規性等の基準日は原則中国での出願日となります。本国での事業と日本の事業展開とをリンクさせることがあらかじめ想定される場合には、早めに日本でも知的財産権の確保を行うことが肝要です。
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