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IV. マーケティングについて

マーケティングのSTP

創業をする上では、ビジネスチャンスがあるかどうかを明らかにしておく必要があります。協力者を募ったり、融資を依頼したりするには、第3者が納得できるだけの説得材料が必要です。そもそも「ターゲットとする顧客は誰なのか」、「そこにはどんなニーズがあるのか」、自分たちが進出する市場について、しっかり調査をすることが求められているのです。

市場調査を含め、企業がマーケティング戦略を立案する際の基本的な考え方は、「セグメンテーション」、「ターゲティング」、「ポジショニング」の3つに分けられ、それぞれの頭文字をとってSTPと表現しています。ここでは、このSTPをおさえた上で、具体的な市場調査の方法を見ていきたいと思います。

 

S: セグメンテーション

セグメンテーションとは、おなじニーズをもつ消費者を分類することです。つまり、市場を分解してわかりやすくすることといえます。この場合に重要なのは、「自社にとって最も魅力的な市場(強みを発揮できる市場)はどこか?」を探し出すことです。そのためには「どういった切り口で市場を分ければよいか」を考えることが重要です。その際の切り口として、一般的に「人口動態変数」「地理的変数」「心理的変数」「行動的変数」の4つの視点から見ています。

人口動態変数 年齢、性別、所得、家族構成、教育課程、職業など
地理的変数 地域、人口密度、気候など
心理的変数 性格、パーソナリティ、ライフスタイルなど
行動的変数 求める便益や購買頻度、広告反応、価格反応など

 

T: ターゲティング

ターゲティングとは、市場を分解した後に、自社の強みを活かして、顧客に高い満足を与えられる市場を、ターゲット(標的市場)として抽出することです。

例えば、前述のセグメンテーションの結果、自社の強みが発揮できそうな市場は、「40代の女性で、かつ年収800万円以上の富裕層。しかも、都心で一人でもゆっくりと飲みたい人」などというように、標的を絞り込んでいきます。

 

P: ポジショニング

最後はポジショニングです。ターゲットとした市場に対して、自社の提案を他社よりも高く評価してもらえるように、その提案を巧みにポジショニングすることです。つまり「他社との違いはなにか?」「差別的優位性はどこあるのか?」といった、他社との違い(差別化)を明確にして、顧客に意識づけることです。ここでは、他社との違いを可視化できるように、右図のようなポジショニングマップを作成し、可視化することが重要となります。

例えば、お酒の小売を始めようと考えた場合、縦軸に「洋」か「和」か、横軸に「一般的」か「専門的」で軸を取り、近隣の競合他社をプロットして、自社の差別化のポイントを見ます。

 

市場調査の方法

具体的に市場調査を行なうには、Webサイトを上手く活用して、客観的なデータを取得することが有効です。

1)業界動向の調べ方

セグメンテーションを行なうために、まずはターゲットとしたい顧客が属する業界の現状を把握しましょう。業界状況を調べるためには、国立国会図書館が無料で提供している「リサーチ・ナビ」が有効です。

リサーチ・ナビ http://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/
国立国会図書館が提供する「調べものの窓口」となるサイトです。キーワードや分野から、調べたい情報を効率よく探すことができます。本やWebサイト、各種データベース、関係機関情報を案内しています。

例えば、「飲食業」について調べたい場合には、サイト上の検索ボックスに「飲食業」と入力して検索すると、「外食産業に関する基礎的知識を得るための資料」などの調べ方の情報が入手できます。そこから各業界団体などのWebサイトへ訪問することも可能です。

 

 

2)地域の現状を知る

ターゲットをエリアで絞った場合には、その進出する地域の現状を把握しておく必要があります。そのためには、以下の2つのWebサイトが参考となります。どちらも無料でご利用いただけます。

総務省統計局 統計データ http://www.stat.go.jp/data/
 国勢調査,経済センサス,人口推計,労働力調査,家計調査,消費者物価指数など統計局が実施している統計調査・加工統計及び日本統計年鑑,日本の統計,世界の統計などの総合統計データを入手することができます。

例えば、都道府県別の人口割合を調べたり、所得水準を調べたりすることが可能です。

 

 

3)流行を知る

他社との差別化のポイントを明確にするには、顧客のニーズを明らかにしなければなりません。そのためには市場環境における流行(トレンド)を把握しておく必要があります。

Googleトレンド https://www.google.co.jp/trends/
 ある単語がGoogle上で「どれだけ検索されているか」という傾向をグラフで見ることができるサービスです。また、調査したい単語がグラフ表示された際、その時にどんなニュースがあったかを把握することができ、検索数が多いときには世の中で何があったのかが分かるようになっています。また関連検索キーワードの提示もされ、検索ボリュームの増減の傾向から、トレンドを把握できます。  

マーケティングの4Pと4C

顧客に、自社のポジショニングを理解してもらうために、「製品」「価格」「チャネル」「販売促進」の4つの視点から、それぞれの取り組みを、バランス良く組み合わせるマーケティングミックスが4Pです。これは、あくまでも企業側(売り手)から見た4つの視点で、これだけだと、顧客の視点が考慮されていない可能性があります。これを顧客側(買い手)から見た、「顧客価値」「顧客コスト」「利便性」「コミュニケーション」の、4つの視点に置き換えて考えてみるのが4Cです。

「製品・サービス(Product) ←→ 顧客にとっての価値(Customer Value)」

製品やサービス自体の機能、それらの品質、デザイン、保証体制等のアフターケア、製品パッケージなど、製品・サービス自体が、他社とどう違うかを検討していきます。そして、その違いにより、顧客にとってはどのような価値が生まれるのかを考えます。

「価格(Price) ←→ 顧客にかかるコスト(Customer Cost)」

販売価格、割引率、端数価格等、価格設定をどうするか考えます。顧客からしたら、「価値を手に入れるために、どれだけのコストがかかるのか?」という視点です。

「チャネル・流通(Place) ←→ 顧客にとっての利便性(Convenience)」

「価値をどのように顧客に届けるのか?」通常は販売チャネル(店舗販売、ネット販売、直販、卸売りなど)、流通経路、物流などですが、「情報という価値」の提供方法も考えられます。顧客にとっては、「その価値を手に入れるために、どのような労力が必要なのか?」「お店に出向くのか? 宅配されるのか?」といった視点で考え、欲しいと思ったタイミングで迅速に購入できるような、顧客にとって便利な仕組みを築くことが重要です。

「販売促進(Promotion) ←→ 顧客との会話(Communication)」

「価値を顧客にどのように知ってもらうのか? 理解してもらうのか?」そのためには宣伝広告やパブリシティー、営業担当者による人的営業、ダイレクトメール、口コミの醸成、ホームページ、SNSの活用によるインターネット上でのコミュニケーションなど、顧客との接点がポイントになります。

この様に、顧客へのアプローチの方法を、売り手と買い手の4つの視点で、それぞれをバランス良く考えて、組み合わせていくことがマーケティングミックスであり、戦術的マーケティングにおいての重要なポイントになっています。

 

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